「収集されたものたち」に焦点を当てた企画展。いつの時代でも人は「もの」に執着し、深く愛し、その欲望を注いできた。展示はアーティスト、コレクター、学者、収集家など、様々な立場の人たちによって集められた、価値のあるもの、あるいは日常に溢れるような無価値なものの集合体だ。今展の目玉「パートナー(テディベアプロジェクト)」では、3000以上の家族から集めた家族写真とテディベアが部屋を埋め尽くす。膨大な数の家族写真は、「テディベア」という共通モチーフにおける人の相違点や環境の違いなど、様々なストーリを私達に想起させる。「テディベア」は同時に、人々の「もの」への愛情・執着を示す一つの象徴となり、それはまるでかつてそこにあった「欲望の残骸」が転がっているようでもある。その他、ロジェ・カイヨワの珍しい石の集合体や、ハリースミスのあやとりのコレクション、大竹伸朗のコラージュされたスクラッチブックのシリーズなど、多種多様なコレクションによって構成。記憶の集積であるといえる「もの」。こうした記憶の結晶に立ち会うことで、私たちは傍観者ではなく目撃者となり、一直線上ではない交錯した時間を体験できる。(中井澪)
9月25日まで
The New Museum of Contemporary Art
235 Bowery
212-219-1222
11:00am ~6:00pm、木11:00am ~9:00pm、月/火休館
大人$12、シニア$10、学生$8、18歳以下無料
www.newmuseum.org
A feast of Astonishment: Charlotte Moorman and Alan-Garde, 1960s-1980s
1960年代から80年にかけてニューヨークの前衛芸術を牽引した一人、シャーロット・モーマンの個展。モーマンは元々、クラッシック音楽を勉強しチェリストとしてキャリアを積んでいたが、1960年代のアートシーンに感化されフルクサスのメンバーになり、ナムジュンパイクらとともにパフォーマンスをするようになった。両胸に小さなテレビのブラウン管をくくりつけてチェロを演奏したり、上半身裸になって演奏することで有名に。1991年に乳癌によって57歳の若さでこの世を去るまで、精力的にフルクサスのいう「ハプニング」を体現していった一人であろう。本展では、モーマンの記録映像や使用したチェロやチェロのオブジェ、パフォーマンスの記録写真などを、4つの時代に分けて展示。モーマンの活動の秘跡を追うことができる構成になっている。(中井澪)
12月10日まで
Grey Art Gallery, New York University
100 Washington Square East
212-998-6780
火/金/木11:00am–6:00pm、水11:00am–8:00pm、土11:00am–5:00pm
日・月休館
入場料任意寄付($3を推奨)
greyartgallery.nyu.edu
Teiji Furuhashi: Lovers
古橋悌二の代表作「Lovers」が展示されている。古橋は京都を拠点に世界で公演を続けるアーティストグループ「ダムタイプ」の中心メンバーとして活動してきた国際的なアーティストである。真っ暗な部屋の中に亡霊のようなぼんやりとした男女の人影が、中心のプロジェクターから壁4面に投影される。右へ左へ歩いたり、走ったり、しながら彼らはすれ違っていく。そして時折思い出したように立ち止まり二つの影が互いを抱擁する。また、ある人影は観客の動きに反応し、両手を広げて倒れ込むように消えていく。それは、まるで観客がそこにいたことを肯定しようとしているかのようにも見える。古橋は同性愛者でありエイズウイルスに感染していることを公表していた。そして「LOVERS」を発表した翌年の1995年に古橋は敗血症により35歳でこの世を去った。本展は1995年にMOMAで展示をしてから11年ぶりの展示となる。(中井澪)
2017年2月12日まで
The Museum of Modern Art, New York
11 W. 53rd St.
212-708-9400
土-木10:30am-5:30pm、 金10:30am-8:00pm *サンクスギビング、クリスマスは休館
一般$25、65歳以上$18、学生 $14、16歳以下無料
毎週金曜日の4:00pm -8:00pm入場料無料
moma.org
Pipilotti Rist: Pixel Forest
近年、ピピロッティ・リストはビデオ、マルチメディアアートの先駆者として世界中で広く認知され活躍の場を広げている。本展はそんなリストの大規模なインスタレーション作品を展示。1980年代の彼女のシングルチャンネルの初期作品から近作までを一挙に公開する。映像作品は官能的で鮮やかな色彩の移ろいが鑑賞者を包み込む。薄暗い部屋にいくつものベットが設置してあり、鑑賞者はその上に寝転がりながら天井の歪な形をした巨大なスクリーンを眺める。甘く不安定な歌声と水の中の女性が揺らいでいる映像に包まれていくうちに思わず眠りについてしまいそうになる。(中井澪)
2017年1月15日まで
The New Museum of Contemporary Art
235 Bowery
212-219-1222
11:00am~6:00pm 木曜9:00pm 月・火休館
大人$12、シニア$10、学生$8、18歳以下無料
www.newmuseum.org
Alma Allen
アルマ・アレンの初のニューヨーク個展。アルマは半貴石やブロンズ、木材を素材に複雑な形の彫刻を制作するアーティスト。作品はまるで生き物のような独特の丸みを帯びておりBrancusiの作品Bird in Spaceを思わせる。ギャラリーには数十点がテーブルや床や窓辺に並べられており、それぞれの洗練された形や色は異様な存在感を放つ。アルマは1970年アメリカのユタ州 ハーバー市に生まれ1990年代から数々の美術館で精力的に展示をしている。2014年には2年に一度ホイットニー美術館が主催するホイットニービエンナーレで紹介された。(中井澪)
10月29日まで
BLUM & POE
19 E. 66th St.
212-249-2249
火~土 10:00am - 6:00pm
入場無料
www.blumandpoe.com
Nan Goldin: The Ballad of Sexual Dependency
ナン・ゴールディンの写す被写体は無防備な姿をカメラに晒(さら)す。彼らはどこか痛々しく壊れそうになりながら、必死に自我を保とうとしているようにみえる。ゴールディンは1953年、ワシントンDC生まれた。彼女が11歳の時に姉が自殺したことで家族は崩壊。14歳の時に家出、ドラッグクイーンたちと暮らすようになった。写真を撮り始めたのは、自身につきまとっていた喪失感を取り払うためだった。日常を写真に残すことで、ゴールディンは安心感を覚えた。麻薬、暴力、性依存…それらは彼女にとっての日常であり彼女もその一部だった。本展では「性的依存のバラッド」(The Ballad of Sexual Dependency)が上映される。ゴールディンの写真を静止画でスライドショーにした作品で、映像とともに甘く気だるい音楽が流れる。(中井澪)
2017年2月12日まで
The Museum of Modern Art, New York
11 W. 53rd St.
212-708-9400
土~木10:30am~5:30pm. 金10:30am~8:00pm ※サンクスギビング、クリスマスは休館
一般$25、65歳以上$18、学生$14、16歳以下無料、毎週金曜日4:00pm~8:00pm入場料無料
www.moma.org
No Limits: Zao Wou-Ki
世界的な抽象画家である中国出身のZao Wou-Ki (1920–2013)の展示がAsia Societyではじまっている。まるで絵画のような書体の文字と油絵、ペン画、リトグラフ、版画、水彩画などあらゆる表現方法を駆使した彼の抽象作品は現代を代表する抽象画としてヨーロッパをはじめアメリカ、アジアなどで高い評価を受けている。彼は15歳の時に杭州にあるナショナルアカデミーオブファインアート(現在の中国アカデミーオブアート)に進学し本格的な絵画の勉強をはじめた。その後1948年にパリに移住し多くの影響を受けながら、独自の表現方法を確立していった。本展、No Limits: Zao Wou-Kiはアメリカの初の美術館での回顧展であり、開催するにあたりアメリカ、ヨーロッパ、アジア各地の美術館や個人のコレクターの協力を得て実現することとなった。普段はなかなか観ることのできない彼の人生の軌跡をこの機会に追ってみてはいかがだろうか。(中井澪)
2017年1月8日まで
Asia Society
725 Park Ave.
212-288-6400
火-日11:00am-6:00pm 金-11:00am-9:00pm 月曜休館
大人:$12、シニア:$10、学生:$7、16歳以下とメンバー会員は無料、
金曜6pm-9pm:無料
asiasociety.org
A Revolutionary Impulse: The Rise of the Russian Avant-Garde
1912年から1935年にかけてロシアには芸術運動が盛んに起こっており社会主義リアリズムが唯一の表現手段とされた。本展ではアレクサンドラ・エクステル(Alexandra Exter)やナターリヤ・ゴンチャローヴァ(Natalia Goncharova)など当時のアヴァンギャルドを代表するアーティストたちの先駆的な作品が展示されている。絵画、彫刻、写真家、印刷物、書籍、建築やグラフィックデザインなど作品は多岐に及ぶ。ロシア革命から100年たった今改めて当時の芸術運動が現在にどう影響を与えているかを振り返ることができる貴重な展示。(中井澪)
3月12日まで
The Museum of Modern Art, New York
11 W. 53rd St.
212-708-9400
土-木10:30am-5:30pm、 金10:30am-8:00pm *クリスマス休館
一般$25、65歳以上$18、学生 $14、16歳以下無料、
毎週金曜日の4:00pm -8:00pm入場料無料
moma.org
Carmen Herrera Line of sight
抽象画家、ミニマル・アーティストとしての評価が高いカルメン・ヘレラの展示。ニューヨークの美術館での初個展で、1948年から78年にかけての彼女の作品にフォーカスされた構成になっている。展示されている彼女の約50作品は、ペインティングをはじめ立体作品や紙の作品であり、第二次大戦後からパリを拠点にどのように彼女が独自のスタイルを模索して行ったのかを追っていけるような展示になっている。これらほとんどの作品は、これまで美術館では展示されたことがなく、本展は大変貴重な機会。(中井澪)
2017年1月2日まで
Whitney Museum of American Art
99 Gansevoort St.
212-570-3600
日 - 木 10:30am-6:00pm 金 - 土 10:30am-10:00pm 火休館
大人 :$25、シニア :$18、学生 :$18、18 歳以下無料
whitney.org